ビル用マルチエアコンに採用した冷媒(R32)は、微燃性の冷媒です。万一、室内に冷媒が漏れた場合、その冷媒濃度が許容値を超えると火災へ至るおそれがあり、許容値を超えない対策が必要です。ビル用マルチエアコンは、右表の一般社団法人日本冷凍空調工業会が発行する要求事項についての規格やガイドラインを適用します。
JRA GL-20 | 特定不活性ガスを使用した冷媒設備の冷媒ガスが漏えいしたときの燃焼を防止するための適切な措置 |
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JRA GL-16 | 微燃性(A2L)冷媒を使用した業務用エアコンの冷媒漏えい時の安全確保のための施設ガイドライン |
JRA 4070 | 微燃性(A2L)冷媒を使用した業務用エアコンの冷媒漏えい時の安全機能要求事項 |
JRA 4068 | 冷凍空調機器に関する冷媒漏えい検知警報器要求事項 |
以下①〜③の手順で部屋ごとに安全対策の要否を判定してください。
① 冷媒系統ごとの総冷媒量m(kg)を求め、
② 次式により冷媒漏えい時最大濃度Rfを計算します。
③ 結果判定
冷媒漏えい時最大濃度Rfの結果が、燃焼下限界濃度LFL( R32は0.307kg/m3 )の1/4( 0.076kg/m3 )以下の場合には、安全対策は不要となります。
LFLが1/4を超える場合は以下の安全対策を行ってください。
冷媒検知警報器+ 安全遮断弁または機械換気装置の組合せが必要です。
冷媒検知器・警報器警報器は冷媒検知器からの冷媒漏えい信号を受けて、ランプの点灯または点滅と同時に警告音を発します。
なお、自主避難できない人々がいる施設、または不特定多数の人々が自由に出入りできる施設の場合は、管理人室など関係者が常駐する場所に接点などで警報を出す必要があります。冷媒検知器の設置において漏えい想定箇所が床面から1.5m以上の場合は、漏えい想定箇所の中心から水平方向へ10m以内に1個とし、漏えい高さより低い位置かつ床面からの高さ30cm以内としてください。
安全遮断弁遮断後の最大冷媒濃度がLFLの1/2以下になる位置に設け、冷媒検知警報器の信号によって冷媒回路を遮断します。設置場所は点検者が点検可能な位置にしてください。
機械換気装置原則として空調の使用および不使用、在室および不在にかかわらず、24時間常時運転とし管理者以外が停止したりメンテナンス以外で停止できないようにするか、または冷媒漏えい検知器によって冷媒漏えい時に自動的に作動させてください。
① 換気回数以上の換気能力を満足しなければならない。
式① n ≧50/( G×V )
② 外気処理など、室内ユニットに外気を取込んだ空気を供給する室内ユニットの場合に限り、その空調機が取り込む外気量を含めて換気回数を決定してもよい。
式② n ≧50/( G×V ) ー Q/V
n: 換気回数(回/hr) G: LFL(kg/m3) V: 相当容積(m3)
Q: 外気導入する室内ユニットにおける外気導入量(m3/hr)
漏えい想定箇所とは、冷媒が漏えいした場合、着火事故の原因になり得る程の可燃域を生成する可能性がある箇所となります。具体的には以下があげられます。
式が成り立つ場合、冷媒検知警報器を設置。室外ユニットファンによる換気(かくはん運転)が必要になります。横吹室外ユニットの場合は半地下深さ(壁高さ)≦2m、吹出口と壁との距離≦3mとする必要があります。
冷媒R32を使用するビル用マルチエアコンは一般社団法人日本冷凍空調工業会のガイドラインに沿った設計・施工・保守が必要です。上部に記載の安全対策要否判定方法にて安全対策が必要と判定された部屋には「安全対策」が必要となります。詳細は日本冷凍空調工業会規定「JRA GL-16 」「JRA GL-20 」「JRA4070 」に準拠した冷媒検知警報器・安全遮断弁・ねじ接合継手をラインアップしています。
安全対策が必要な部屋には下記の安全装置を設置してください。
冷媒センサーにより冷媒漏えいを検知します。警報部より光と音でお知らせします。さらに安全遮断弁、または換気装置を作動します。
多機能デザインリモコン(PC-ARFG4/PC-ARFG4(B))は、表示(光)と音で知らせる警報機能を搭載しています。警報音は安全性を考慮し、多機能デザインリモコンから発報する音量を 65dBA以上に設定しています。※1※2
日立は「性能3」の検知器を採用。耐用年数が5年間のセンサーを2つ搭載することで耐用年数を10年間まで延長。交換頻度を低減できます。
多機能デザインリモコン (内蔵タイプ・別設置タイプとも)
冷媒検知警報器で冷媒漏えいを検知すると、安全遮断弁が作動し、室内ユニットへの冷媒供給を遮断します。これにより室内への冷媒漏えいを最小限に抑えます。
フレア接続箇所は、JRA GL-16において、漏えい想定箇所となります。ISO14903に適合するねじ接合継手を使用した接合部・ろう付け接続部については、冷媒漏えい想定箇所から除外されます。
( NST-GP63[22~63型用]/NST-GP160[ 71~160型用])
冷媒R32を採用したビル用マルチエアコンで検知警報器と安全遮断弁(または機械換気装置)を設置した場合1年に1回以上「安全装置の回路検査」を実施する必要があります。安全装置の回路検査は「多機能デザインリモコン( PC-ARFG4/PC-ARFG4( B ))」にて実施してください。
冷媒R32 日立業務用空調機器 安全対策 要否判定ページのご案内
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